no.3/神戸のみち


「ライブがんばってや。ホイッ、これおごり!」
そう言ってマスターは私とマサシにウイスキーを出してくれた。CHICKEN GEORGEの裏にあるこのお店「W」には、 神戸に来ると必ずといっていいほど顔を出す。 リハーサルが終わってホテルにチェックインした後、 他の土地であったなら ロビーで待ち合わせなどして、 一緒に ライブハウスに向かうところであるのに、 なぜか神戸だけはおのおの、 てんでんばらばらにこのお店に集合してしまうのである。
2001年2月22日、 私とマサシは またしても律義に集合してしまった。

「プライベーツってあのプライベーツ?」梅ちゃんが俺に聞いてきた。 それ以外に何があんだよ、そうさあのTHE PRIVATESだよ。 「プライベーツってそんなに有名なの?」マサシが続ける。 相変わらず日本の音楽事情にうといヤツだ。という俺もそんなに詳しくは知らないんだけどさ。 なんでも1987年にメジャーデビューしたっていうからかなり息の長いバンドだ。 アメリカにレコーディングに行ったりしているらしい。ステージも見たけどやっぱりうまいね。 演奏もさることながら、「ステージさばき」っていうのかな、 お客さんを引きつける何かを ちゃんと持ってる感じなんだよな。 やっぱりライブをさんざんこなした、たたき上げのバンドはカッコイイよ。 でもその辺は俺達も負けちゃいないと思ってるんだけどさ。
何はともあれ今回はTHE PRIVATES主催のイベントに参加だ。 でも俺達だけちょっと毛色が違うぞ。ウケるかなぁ。 出番が一番目だからいきなりお客さんが 帰っちまうようなことはないだろうけど、 そもそもちゃんと最初からお客さんが観てくれるのか? ウチらが終わったとたんにドヤドヤ入ってきたら悲しいなぁ。 まったくトップバッターなのにイマイチ認知度の低いバンドは心配事が多いぜ。 早いとこワンマンでソールドアウトのライブができるようにがんばらねーとな。 よろしく頼むぜみんな! そんなこんなでいざステージへ。 おぉっ! けっこういっぱい人がいるじゃねーか。 おぉ!しかも「イェーイ」なんて声までかかってるぜ! いやぁよかった、ウチらのお客さんもいるぜ。 すっかり気分もよくなってスタートだ。 今日は伊賀のときとは違って曲順なんかは決めてないから、 あとはマサシまかせ。 1曲目は『Tool Box』。 マサシがお世話になっているリペア屋さんに捧げた曲。 アップテンポで今日のイベントにはぴったりだ。 いつもながらマサシの曲選びのセンスには感心するよ。 あんな風にギター弾きながら、お客さんの反応とか見てその場に合った曲をちゃんと選ぶんだからさ。 たいしたもんだよ。 続いて『Wondering Feeling』。 早くも客席に降りてギターソロを弾くマサシ。 お客さんも結構喜んでいるように見える。ステージから見るとよく分かるんだよね。 「おっ、いいねぇ」とか「おもしろ〜い」とかいう感じで 見ている人は顔が半笑いで身体のどこかで リズムをとっているからね。 そういうのを見るとこっちもヤル気になるわけだ。 今回のお客さんはなかなか温かい人達だ。 『London1966』『手紙』立て続けにやって ちょっと一服・・・ と思ったのは俺だけ!? 『Jump』が始まる。 しまった、タバコくわえたままだ。 煙が目にしみるんだ、これが。 しょうがないからそのまま弾く。 最後に『All I got』でおしまい。 演る前はどうなることかと思ったけど、温かいお客さん達でよかったよ。 次回もよろしく頼むぜ。Thank you 神戸!



「皆さん遅いですねぇ」

そう言ってマスターは私の注文したウイスキーを出してくれた。 TOA ROAD通りから路地を少し入ったところにあるこの店「L」は 神戸の最後に必ず寄る。 この日はTHE PRIVATESの延原氏、CHICKEN GEORGEのH氏、 そしてマサシと 待ち合わせをしたのであるがみんないっこうに現れない。 梅ちゃんは「風邪気味だから」と学校をズル休みする子供のような 言い訳を残して帰ってしまった。 そんな私のことを哀れと思ったのか、マスターは 「貝瀬さん、誰もこないから一緒に飲みますか。はい乾杯!」 などと言って私の飲み相手になってくれた。 10人も入れば満席のこの店にこの夜は他に客はなく、 たった二人きりではあるが 話し上手のマスターのおかげで 結構楽しい時間を過ごした。 途中で延原氏から行けなくなったとの電話があり 東京での再会を約束して電話を切った。 もう午前3時半を少しまわっている。 さすがにH氏もマサシも現れないだろうと思い、 「4時まで待ってそれで帰りますよ」とマスターに伝える。 「そうですねぇ、きそうにありませんね」。 ところが2人はやってきた。しかも4時5分前である。 こうなるといつものパターンである。結局閉店の5時まで飲んで店を後にした。 ホテルに向かって歩くと、どうもマサシが挙動不審である。 やたらキョロキョロとまわりを見回している。 やがて探し物を見つけたといった感じで私に向かって言った。 「俺もう少し飲んで行くから。じゃ、おやすみ」。おそるべし原マサシ。 彼につきあったら肝臓がいくつあっても足りはしない。

毎度毎度こうなのだからGEORGIE PIEのツアーは、さながらサバイバルゲームのようでもある。

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